五味大輔:兼業投資家が築いた300億円資産の軌跡と長期投資戦略の全貌

長野県松本市に住む個人投資家・五味大輔氏は、会社員として働きながら資産300億円超を築いた「兼業投資家」として、日本の投資界において伝説的な存在となっている。中学生時代に100万円から株式投資を開始し、現在までに20年以上の投資経験を積み重ねた五味氏の投資手法と成功の軌跡は、多くの個人投資家にとって学びの宝庫である。

投資家・五味大輔の歩みと資産形成の軌跡

中学時代から始まった投資人生

五味大輔氏の投資人生は1990年代後半から2000年代前半、中学生時代にお年玉や小遣いで貯めた100万円を元手とした株式投資から始まった。この時点で既に、単なる小遣い稼ぎではなく本格的な資産形成への意識を持っていたことが窺える。

大学生時代には100万円の元手を6,000万円まで増加させ、若くして投資の才能を開花させた。この急速な資産拡大の背景には、ゲーム業界への先見性のある投資があり、ガンホーやコロプラなどのゲーム会社株への集中投資により大きな利益を獲得している。

2012年から始まった本格的な資産拡大期

2012年に総資産1億円を達成した五味氏は、この時期から本格的な大型投資を開始した。2014年にはSNSサービスからソーシャルゲーム会社に転換したミクシィ株を大量保有し、大株主として名前が知られるようになった。

ミクシィ株への投資判断は、同社が開発した「モンスターストライク」を実際にプレイし、「このゲームはパズドラを超える」という直感に基づいている。この身近な体験から投資判断を下すスタイルは、五味氏の投資哲学の根幹をなしている。

五味銘柄が生み出す市場インパクト

そーせいグループ筆頭株主としての地位確立

2015年、五味氏は創薬ベンチャーのそーせいグループ(現ネクセラファーマ)の筆頭株主となり、総資産200億円を突破した。同社への投資理由として「10年後、20年後に小野薬品工業を超える企業へ成長する」という長期的な成長期待を挙げており、創薬ベンチャーとしてのポテンシャルに賭けた戦略的投資といえる。

しかし、2023年6月にはそーせいグループが米ファイザー社との糖尿病治療薬共同開発打ち切りを発表し、株価はストップ安となった。この際、五味氏は3日間で111億円の評価損を被ったとされるが、現物取引に徹していたため市場からの退場は免れ、2025年2月現在も同社の筆頭株主として9.50%を保有している。

五味銘柄の市場影響力

五味氏が購入する銘柄は「五味銘柄」と呼ばれ、高い確率で株価上昇すると市場で認識されている。2025年1月には日本ファルコム株を5.02%保有して大株主となったことが公表され、同社株価は急騰した。

この市場影響力について五味氏自身も自覚しており、「この会社はいい」と判断した自分の目に責任を持つという覚悟で、資産の半分を失うリスクを負ってでも投資判断を下すという哲学を持っている。

現物取引と長期投資による安定戦略

レバレッジを使わない現物取引の徹底

五味氏の投資手法で最も特徴的なのは、信用取引を行わず現物取引に徹している点である。本人曰く「空売りはあまりうまくない」として、苦手な手法には手を出さない潔さを持っている。レバレッジを使わないことで、株価大暴落時にも市場から退場することなく生き残れたことを成功要因として挙げている。

この現物取引重視の戦略により、2023年のそーせいグループ株価急落時にも、信用取引で追証が発生するような事態を避けることができた。資産300億円という規模でありながら、堅実なリスク管理を継続していることが、長期的な資産形成の基盤となっている。

企業価値に基づく長期投資アプローチ

五味氏は「日経平均株価がいつか4万円に行く」というイメージを持ち、企業の中長期的な成長ポテンシャルに投資する長期投資家である。単なるマネーゲームとしての投機ではなく、企業の未来に投資するグロース型の長期投資を基本戦略としている。

投資先の選定においては、株価の上昇に応じて段階的に売却し利益を確定させる一方で、企業価値が株価を上回っていると判断すれば買い増しを継続する。過去の買値にはこだわらず、現在の企業価値と株価を比較した投資判断を行っている。

情報収集と銘柄選定の実践手法

身近な体験から投資機会を発掘

五味氏の銘柄選定手法で注目すべきは、日常生活での体験を投資判断に活用している点である。不動産情報サイトを実際に使用して使いやすさを感じたLIFULL(旧ネクスト)への投資や、メガネ店ジェイアイエヌのサービス体験から投資を決定した例がある。

この「身の回りから投資の種を見つける」アプローチは、机上の数字分析だけでは得られない消費者視点での企業評価を可能にしている。実際にサービスや商品を体験することで、企業の競争優位性や成長ポテンシャルを直感的に判断する能力が、五味氏の投資成功の重要な要因となっている。

公開情報による企業分析

五味氏は特別な情報ソースを持たず、Twitterや決算短信など誰でもアクセスできる情報から投資判断を行っている。業績上方修正の情報を見かけ、新しいサービスが好調であることを確認した上で、企業価値に対して株価が割安と判断すれば投資を実行する。

この手法は「特別な情報を持たない個人投資家でも成功できる」ことを実証しており、多くの個人投資家にとって現実的で再現性の高いアプローチといえる。日々1日10-20分程度の情報収集で投資判断を行っているという効率性も、兼業投資家としての特徴を表している。

現在の保有ポートフォリオと投資戦略

2025年の主力保有銘柄

2025年2月現在の五味氏の主要保有銘柄は、ネクセラファーマ(9.50%保有、約68.4億円)を筆頭に、ステムリム(5.3%保有、約9.7億円)、ウルトラファブリックス・ホールディングス(5.2%保有、約8.5億円)、日本ファルコム(5.02%保有、約5.7億円)などとなっている。

これらの銘柄構成を見ると、バイオ・創薬関連、ゲーム・エンターテインメント、IT・テクノロジー分野への集中投資が特徴的である。特に創薬ベンチャーへの投資額が突出しており、長期的な医療技術革新への期待が窺える。

リスク分散と集中投資のバランス

五味氏のポートフォリオは約20銘柄に分散されているが、上位数銘柄への集中度が高い。ネクセラファーマ一社で68億円超を保有するなど、確信度の高い銘柄への集中投資を行う一方で、中小型株への幅広い投資によりリスク分散も図っている。

この集中と分散のバランスは、高い確信度を持った投資先には大きな資金を投じ、新興企業への投資では比較的少額でポートフォリオを構築するという戦略的アプローチを示している。

兼業投資家への示唆と学習価値

五味大輔氏の投資手法は、特別な情報や高度な分析技術に依存せず、現物取引と長期投資により着実に資産を拡大してきた実績を持つ。日常生活での体験を投資判断に活用する身近なアプローチと、企業の本質的価値に基づく長期投資哲学は、多くの個人投資家にとって参考となる実践的な手法である。

特に、レバレッジを使わない堅実なリスク管理と、投資先企業への深い理解に基づく長期保有戦略は、持続的な資産形成を目指す投資家にとって重要な教訓となる。五味氏の成功事例は、特別な才能や情報を持たない個人投資家でも、適切な投資哲学と継続的な実践により大きな成果を達成できることを示している。

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